これまで、体育や算数で過去に実践してきた授業実践を公開してきましたが、今回は国語の実践についても紹介します。
最初に、何度かお伝えしているかもしれませんが、特別支援学校は小学校の授業と異なる点がいくつかあり、その一つとして、授業の目標が「学年ごと」ではなく「段階別」となっていることです。
例えば、小学校の学習指導要領において3年生で割り算、6年生で比例と反比例を行うことになっています。他の教科でも、発達段階や教科の系統性を踏まえて定められています。
しかし、特別支援学校の学習指導要領では、各教科を小学部で3つの段階、中学部で2段階、高等部で2段階というように構成されています。
小学校1、2年生で行う生活科は小学部、理科と社会は中学部と高等部に段階別に設定されています。内容も、中学部で発芽について行ったり高等部で水溶液について学習したりします。
重要なのは、高等部の子であっても、学習の到達度によっては小学部の段階を目標として取り扱うことがあるということです。学年が上がればその段階を学習するというわけではなく、その段階を十分達成できると教師が判断した時に、次の段階の授業を行うということになります。
各段階の内容について、算数で例えるなら、小学部2~3段階で学ぶ内容は小学校1年生の内容にほぼ合致しています。
また、理科の学習であれば、中学部1、2段階は3、4年生の目標、高等部1、2段階は5、6年生の目標にほぼ合致している、ということになります。
他の教科でも多少のズレはありますが概ねこのようになっています。
このことを知らない教員や保護者の方もいらっしゃいますので、覚えておいていただけたらと思います。
でも、国語の授業って具体的に何をしたらいいの?
算数と同じく、少しゲーム性をもたせるといいぞ
今回は、小学校2段階程度の目標で国語科を学習する児童に対して行った授業実践の内容を紹介していきます。
【もじもじリーグ】
目標
小学部の児童8名がいて、多少の差はあるが全員が2段階程度を目標として学習を行っていました。
学習指導要領に当てはまる個所としては、【知識・技能 ア (ウ)】や、【書くこと イ 】になります。
平仮名を書くことは難しいが読める子、一文字なら書くことはできるが単語になると間違える子、清音はできるが拗音(小さい『やゆよ』)や促音(小さい『つ』)が難しいなど課題が児童によって異なっていました。
しかし、人数がいる強みや仲が良かったことから、ただ書いたり読んだりするのではなく、ゲーム性を取り入れた授業ができないかと考えていました。
きっかけは、フジテレビの人気番組
少しゲーム性のある授業はできないかと考えていた時、ふとあるテレビ番組が目に入りました。それが、フジテレビで放送されているネプリーグでした。
ネプリーグはネプチューンの3人とゲストがチーム対抗でクイズをしていく番組でした。お題に対して5人全員が答える「ファイブボンバー」や、一つの回答を5人で一文字ずつ答えていく「ファイブリーグ」などのゲームがありました。
「ファイブリーグ」を見ていた時に、「これ、平仮名やカタカナの学習に使えるし音韻分解の基礎作りにもなる!」と考えて、授業内容を考えていきました。
ちなみに、「もじもじリーグ」という名前については、「文字を学習する」という意味と児童が考えてモジモジしている姿を想定して命名しました。
使用したもの
・タブレット端末:児童一人につき一台(ホワイトボード、紙でも対応可能)
・keynote:教師が問題を提示するために
・TV
3~5文字程度の平仮名、カタガナ、長音(ケーキなど)、促音(バッタなど小さい「つ」)、拗音(ちいさいや、ゆ、よ)それぞれの理解を目標とした授業を実践しました。
・「りんご」という単語が、「り」と「ん」と「ご」という3つの文字で構成されているという音韻分解を学ぶこともできる。
準備
①keynoteで問題を作成します。
②平仮名を書くことが難しいが、読むことはできる児童のために、平仮名1文字ずつのPDF資料をタブレット端末に配布
※タブレット端末に慣れるために、Googleclassroomを使用。PDFデータを共有し、そこから開くことを児童に伝えた。)
授業内容と単元の流れ
授業内容としては、単語のイラストが表れ、3~5人程度のグループで答えを導いていきます。児童は横一列に並んでいて、自分が担当する文字をタブレットから探して提示することになります。
他の児童と教員で答えを確認し、正解したら次のグループが行います。
授業の終わりは個人活動として、書くもしくは文字カードを並べるて単語をつくることで振り返りをしました。
単元の流れとして、
- 3~5文字で清音のみの単語
- 濁音が入った単語
- 拗音が入った単語
- 拗音と濁音が入った単語
- 促音が入った単語
- カタカナ
- 長音
といった流れで、一つの内容を2~3時間分行いました。国語の基礎となる部分なので、かなり時間をかけて行ってきました。
授業における支援
・問題を変えながら2、3回行うと、できる子と苦手な子がはっきりしてきたので、グループを作る際に、できる子と苦手な子が混在するようにした。
・タブレットを持って前に並ぶと、反対の並びになって混乱する児童がいた。そのため、ホワイトボードに児童の写真を貼り、自分の場所に磁石付きケースに入ったタブレット端末を貼るようにした。
・つまづいている児童がいたとき、教師がその子に対して話しかける前に、他の児童に発問してどうしたら良いかを全員で考えられるようにする。
例:間違えたAくん「これだ」
教師「Bくん、Cくん、Aくんはどの文字を出したらいいのかな?」
「全員で読んでみよう。あれ?と思う文字はあるかな?」
・正解かどうかを待っている児童に尋ねて、全員で問題を考えるようにする。
良かった点
・あまり自分から発言しない子が、答えがわかったときに「○○はこっち」と、文字の位置を友達に教えて正しい答えを導くことができた。
・ただ文字を書いていくだけの授業ではなく、自分で考えたり友達の考えを見たりする経験ができる授業形態にすることができた。
・平仮名は読めるのに単語を書くときになると困っている子は、この授業で間違えることが多い。1文字目がこれ、2文字目はこれ、と理解できていない可能性があることが分かり、書くことの指導において文字並べが大切であると気づけた
・BGMをかけてゲームのように行うことで、児童は楽しそうに取り組んでいた。また、8人の集団だったが、一つの問題に3~5人が同時にグループで行うため、一人がたくさんの問題に取り組むことができた。
・平仮名、カタガナの文字理解が不十分だった児童が、授業以外でも書かれている文字を積極的に読んだり、描いた絵に文字で名前を書き加えたりする姿が新たに見られた。
まとめ
今回は、国語の実践として「モジモジリーグ」を紹介しました。
ゲーム性を取り入れると子どもたちは楽しく取り組むことができます。その中に国語としての目標・指導事項を教師の中で明確にして学びとして行うことが重要だと感じています。
中にはまだ平仮名の定着が難しい子もいましたが、「今日はもじもじリーグ?」と聞いて授業を楽しみにしている姿を見せたり、絵本の絵だけに注目していた子が「あいすの『あ』だ」などと文字に注目して読む姿が見られたりしました。
私の中では、テレビ番組や遊び、流行のダンスや音楽などをいかに学習として組み立てるかを大切にしています。今後もこのような実践を紹介していきます。