【見逃し厳禁】雑誌にも掲載!生活単元学習 お化けランド

教育

みなさんは、生活単元学習の授業でどのようなことをされていますか?

特別支援学校で仕事をしていると、教科書がない中で授業を一から考えていくことが多くなるのですが、その中でも生活単元学習は内容を考えるのがとても苦労する授業ではないでしょうか?

実際に生活単元学習では、誕生会やクリスマス会などの季節の行事を行ったり、調理活動や水遊びなどを行っています。しかし、毎年同じような活動を行っていると感じた私は、マンネリ化を解消するために今までに勤務校で行っていなかった新しい単元を同僚と考えました。

今回は、小学部で実践した「お化けランド」について紹介していきます。製作をして遊ぶことがおおまかな活動内容となっています。こちらの実践例は過去に雑誌掲載されたこともあります。ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

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生活単元 「きてほしいな、お化けランド」

まず最初に話しておきたいこととして、今回の実践で学んだことは「子どもが本気でのめり込む活動や状況、雰囲気を設定すると、活動の幅が広がり思考が深まる。」ということです。

これから4つの項目に従って、写真でも補足をしながら紹介していきます。

①「今まで素材遊びはしてるじゃん!」では、なぜこの単元を設定したのか?

生活単元学習において、当時勤務していた学校の小学部で行っていたことは、運動会やクリスマスといった季節の行事、地域の行事に関連することが主でした。そこに加えて、特別支援学校での外国語活動としてALTとの交流などもありました。

比較的小さな学校だったので、小学部全員で授業を行うことがほとんどでした。そのため、学年が上がっても同じような活動内容になることがあり、マンネリ化するのではないかと思いました。

そこで、新しい単元としてどんなことができるかを同僚と相談していた時に、児童がおばけの絵本や遊びをしていたことから、「お化け屋敷にしよう」という案が出ました。ただし、3つの理由から、「お化け屋敷」から今回紹介する「お化けランド」になりました。

「お化け屋敷」から「お化けランド」に変わった理由

(1) 二人の児童の特性

 一つ目の理由として、二人の児童の特性がありました。一人は私が担任していた児童A君です。彼は発達段階としては1歳半前後で、野菜や果物などの単語が話せるようになってきた子でした。ほかの児童に比べると学習が難しく興味の幅も狭いのですが、彼は「おばけなんてないさ」の歌やお化けに関する絵本は1年生のころから大好きでした。

そのため、彼が活動を楽しめるように、「お化け」という要素は取り入れようと思いました。しかし、「暗い部屋が苦手」という面もあり、お化け屋敷にするのは難しいかなと考えました。

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しかし、児童の中には暗い部屋がダメな子もいれば、「お化け屋敷なんだから!」と言い、暗くしないとだめだという子が出てきます。このとき、どちらかの意見に賛成すると、どちらかは楽しめなくなる可能性が高いです。

もちろん、状況によってはA君に我慢してもらうこともあります。例えば、「高等部が文化祭の劇でプロジェクターを使うので見やすくするために会場を暗くしなければならない」といった際はA君にも我慢してもらうこともありますが、今回は違います。

計画を立てている段階では絶対にお化け屋敷にしなければならない理由はないため、全員が楽しめるようにお化け屋敷の案を見直しました。

(2) 経験済みのことをさらに発展させていくと面白い?

これまで生活単元や遊びの授業で、素材遊びや感覚遊びなどをたくさん経験してきました。取り組んできた例が下記のようになります。

小麦粉、パン粉、水、氷、団扇(風)、新聞、風船、段ボール、こんにゃく

これらに加え、児童それぞれには好きなものがあります。そこで、自分たちが好きな素材をおばけにしてみんなと遊ぶ、「お化けランド」という単元にしようと考えました。

(3) 待ち時間を減らして活動時間を増やす

一般的なお化け屋敷をイメージしていただけると、グループが入ってから次のグループが入るまで少し待つ時間ができてしまいます。すると、どうしても活動時間が減ってしまいます。

しかし、「お化けランド」では準備期間に選んだ素材でお化けを作り、最後の時間に遊ぶという活動になります。そうすることで、お化け屋敷に比べると待ち時間が無くなり、好きな素材のお化けなので遊びにのめりこむことができるのではないかと考えました。

また、自分が作ったものだけでなく友達が作ったお化けも一緒に楽しめるように、グループごとに分かれて作り、2教室で遊べるようにと考えました。

②単元計画における、教師の意図と子どもの姿

単元の流れを説明します。

導入単元で、教師が用意したお化けランドで遊びました。教室は2つに分けていましたが、このようなコーナーを設定しました。児童が教室に入ってすぐに楽しめるようにBGMをかけて楽しい雰囲気を作ったり、教師も一緒に遊んだりしました。

先生が遊んでいいの?

子どもが活動にのめりこむには、教師が一緒に遊ぶことも重要です。

時間になるとBGMを変えて終わりの雰囲気を出し、振り返りをして次の時間についての話をしました。この時、お化けランドでの遊びを振り返ったり過去の製作や素材遊びの写真を見たりしながら、どんなコーナーを作るか考えました。

実際に教室で出た意見がこのようになります。予想していた通りになったこともあれば違ったものもあり、新しい発見でした。それらを踏まえて、2日目と3日目の準備に入りました。

4日目は招待状づくりとなりました。当時はコロナ休校明けで、自分の教室以外であそぶことが難しくなったことから、手紙のやり取りができるようにポストを作成していました。紙に言葉や絵を描いてポストに入れる様子が見られたので、「せっかくのテーマパークなら」と、招待状を作って友達を誘うことも行いました。

グループを分けて準備しているため、他のグループに対して「○○君に書く」といったことを言う子どもが出てきました。一言メッセージを考える子、教師と一緒に書く子など、それぞれができる形で行いました。

授業の最後に、期待感を持たせるために2教室の準備の様子をまとめた動画を視聴しました。「ふうせんだ~」と楽しそうに話していて、当日への期待感が膨らんでいるようでした。

お化けランドの開園は、2教室で交代しながら行いました。児童は自分が作ったお化けを友達に見せて「これ作ったよ」といったことを話しながら一緒に遊んでいました。

終わった後に感想を書いたりシールを貼ったりしたお礼の手紙を作成し、各教室のポストに投函しました。このようなかたちで単元を終えました。

③私が貫いた、一つの想い

単元計画を作成し、先生方にチェックをいただきました。このとき私は先生方に「子供の発言をできるだけ取り入れて、お化けランドを楽しめるようにしていきたい。」と伝えました。これは、授業は教師による一方向ではなく児童と双方向で授業を作りたいという私の意図があったからです。

特に生活単元では、児童が活動にのめりこむようにするために、「こんなことがしたい。」「これがあったらいい」という言葉がたくさん出てきて、それらを一つでも多く取り入れるべきだと考えていました。「それは無理だよ。」といった言葉ではなく、「それいいね」と返したり「それを使うならこんなやり方もあるよ。」と助言したりすることを大切にしました。

そのために、提示する教材ではどんな遊び方ができるか、子どもがどんなことを考えるのかいろんなことを予想しました。

④教師が気づいた子どもの思考

教師として働いていると、子どもたちの発想に驚かされることが多くあります。今回の実践を通して「あ!そんなこと考えたんだ!」となった場面を紹介していきます。

(1) マットで・・・

今回の実践の中で、特に驚いたのがこちらになります。準備をしているときに私が写真を撮っているのですが、笑いながらも必死に「見ないで」と訴えてきました。

このとき、お化けのイラストをマットの折れる場所に貼って、隠していたのです。「おばけを隠して、びっくりさせたい。」という考えをもって準備をしていたのだと考えられます。こうしたら面白いんじゃないかと自分なりに考えていました。

(2) 「おおきなこおり」

次に、このC児の考えをお話しします。1年生の後半ごろから単語を中心に言葉が多く出てきて、教師のまねもできるようになってきた子です。この子は氷を選びました。ところが、「おっきい氷がいい」と話してくれました。

C児にとっての大きいという基準が私はわかりませんでしたが、想いを無駄にしないために自分で大きさを決めてもらいました。すると、2Lのペットボトル程度の大きさが良いということが分かりました。

そのため、ペットボトルに水とラミネートしたお化けのイラストを入れて凍らせて作りました。想いがかなったこともあり、授業のたびに「おっきいこおり、あした?」と尋ねてくるなど、期待感をもって活動する姿が見られました。

(3) 「風船おばけ」

 次は工作をすることが大好きなD児です。D児は自分でやりたいことを考え、使いたい素材などを選んで作ることができます。そこで、D児に対しては特に細かく声掛けをすることはせず、時間いっぱい集中して取り組めるようにしました。また、使いたいであろうペンや画用紙なども多く用意しておきました。

本人が「これ、泣いたお化け」などのように話しかけてきたときには「怖いね、こっちはどんなお化けになるの?」と更に聞き返して対話をしますが、基本的には見守っています。そのほうが、D児にとっては活動にのめりこむことができるのです。

そうして完成したものを見ると、お化け一つ一つに表情を変えて描いたり、画用紙で飾り作ってつけるなどしていました。集中できる環境にした時のD児の思考には、この単元のみならず驚かされています。

(4) 「ゆきおんな」

学校で一番といっていいくらい、遊ぶ時の発想が素晴らしいE児です。素材として氷がいいと選びましたが、「ゆきおんなになってふーっとしたい」と話してくれました。

「それはお化けか?」と言いたくなる人もいるかもしれませんが、私は自分の想いを貫き、「それなら衣装作ってみようか?」と話し、さらに「コロナウイルスが広まっているから、口から出すことはできないけど、霧吹きに氷と水を入れて冷たいのを手にかけるのはどう?」と伝えて準備に取り掛かりました。

「お化け」のイラストがついた霧吹きに入れる氷を作り、衣装は水色のゴミ袋を選んで自分でペンでイラストなどを描いていました。ゆきおんなのイメージはE児にとっては、「アナと雪の女王」に出てくるエルサだったので、このようになりました。

(5) 風船おばけと団扇お化けのゲーム

自分で作成した団扇おばけを見せてくれた児童や、かざりをつけた風船お化けにした児童がいました。看板をつけて団扇と風船の「ふわふわコーナー」となりました。

お化けランドが開園した際に、このコーナーでは児童がふわふわ浮く風船を団扇で打って遊ぶ様子が見られました。「壊れるかも」といった心配があるかもしれませんが、作った児童たちがそのように遊んでいたため、「ここは、楽しい流れに乗ったほうがいい」と考え、教師も一緒になって遊ぶようにしました。最後まで落とさないようにしたり、顔に風船おばけが当たると嬉しそうにしている姿が見られました。

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まとめ

児童が自分たちで使いたい素材を選び、作っている姿が見られたのがよかったです。また、「こうしたい」という想いを伝えてくる児童が多かったです。なにより、楽しく遊んでいた児童の様子を見ても、この単元を設定してよかったと思っています。

今回、私が実践を通して改めて感じたことを以下のようにまとめます。

どうすれば全員が楽しめる活動になるのか、変えたほうがいいところは柔軟に変える

子どもたちは、好きな素材だと活動にのめり込み、思考の幅が広がる

生活単元学習について、少しでも参考になればと思います。他にも実践例やiPadに関する情報を紹介していますので、ブログだけでなくnoteの方もぜひご覧ください。

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